雪人

「やっぱりあれなんですか?五ヵ条からなる行動規制法の中にある三ヵ条目“露減連絡”なんですね?」

 マスターは渋い顔をして頷いた。
 露減連絡。王に楯突こうとした輩を見つけた人に対して報奨金を出す制度。簡単に言い換えれば、反乱分子を見つけてそういう輩を減らす城への連絡。普通ならこんな制度に従う人は少ないのだが、報奨金の額が三ヵ月家族を養えるぐらい貰えるため、金に目が眩んで仲間を裏切る人が続出した。その所為で貧しい人々、平民、貴族、全ての階級の人がこの制度に縛られ、人を信用しなくなる結果となった。
もともと行動規制法の中にある露減連絡は王都ならどこの国も発令することができるが、王族に対する不満が増えるためどこの国も発令などしない。
しかし、地国は違った。約一年前に大量虐殺をしているため、その時に大金を得た人を誰もがその事について知っているので、露減連絡に拍車をかける役割となった。今では反乱分子がいないかどうかという動きさえある。城に住んでる側としてはこの上なく事が巧くいき成功といえるだろう。
 ミフレは、ダンっとカウンターにジョッキを勢いよく置く。その顔は酔っているそれではなく、強い意志を宿した顔であった。マスターとダントはミフレを見る。

「そんな制度なんてな……なくしてやるよ!」

 ミフレは声高らかに言葉を放つ。酒場全体に響き渡った声に反応した客もミフレに対して「いいぞねぇちゃん!」と騒ぎ立てる。その様子に胸を撫で下ろしたダントは引きつった表情で、ミフレに少し苛立った口調で声をかける。

「リーダ……じゃなくてミフレ、酒を飲んで酔ってるお客だったからよかったもの、発言には気を付けてください」

「いいじゃねぇか兄ちゃん。俺もお穣ちゃんの意見には賛成だぜ。あんな制度なんてなくなればいいんだよ」

「ちょっと、マスターまで何を言って「みんな大変だ!今から公開処刑が行なわれるぞ!」

 ダントが抗議をしようとする声に誰かの声がかぶさった。バンッと勢いよく酒場のドアを開けた中年の男性が、酒場に響き渡るような大声で叫んだのだった。
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