雪人
 朗らかな笑顔を浮かべていたダントはミフレに向き直り、表情が真剣なものへと変わる。その瞳は普段のダントから想像できないほど厳しいものだった。その表情にミフレは訝しげな顔で眉をひそめる。
 二人の間に重苦しい沈黙が流れる。雨など降っていないかのような様子で佇でいる二人に、広場へと向かう他の人が不思議そうに見て通り過ぎる。重苦しい雰囲気の中ダントが口を開く。

「ミフレ――いや、リーダー。処刑される場所へ向かう前に言いたいことがあります」

「ダント、アタシのことをここではリーダーと呼ぶなと言っただろ!」

 約束していたことを破ったダントをミフレは睨み付ける。目は細められ今にも掴み掛かりそうな勢いを無理矢理自分に言い聞かせミフレは抑えていた。
 ダントはミフレに負けないほど冷ややかな視線を浴びせる。

「そんなことはどうでもいいんです。それよりも……あなたは処刑される場所に立ち合って、熱くならないって誓えますか?そして……処刑される人を助けないと誓えますか!?」

 普段冷静なダントが語気を荒くし、睨み付けるようにミフレを見た。その言葉を言われ、ミフレは自分の心の中を見透かされたような気持ちになった。
自分は処刑される場に立ち合って熱くならないと言えるだろうか。
処刑される人間に情が入っても助けないと言えるだろうか。
わからない。
冷静になれるかわからない……
だけど……助けたいと思う気持ちは悪いことじゃないと思いたい。
いつのまにか俯いていたことに気付き、あわてて顔を上げる。上げた先には厳しい表情をしたダントではなく、優しい表情をして見ていた。

「すいません、少し熱くなって……。リーダーのそういう所はアジトのみんな大好きです。でも、処刑される場所ではそういう感情は抑えてください。もし無理なら……僕が抑えますからね」

 優しい眼差しでダントはミフレを見つめた。
 ミフレは自分のためを想っていってくれた相手に照れ笑いを浮かべる。そして、真面目な表情をする。

「……ありがとな」

「いえいえ。それじゃあ、行きましょうか」

 降りしきる雨の中、二人は濡れた道をぴちゃぴちゃと音を鳴らしながら、目的地へと確実に足を運んだ。
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