雪人
広場へと近づくにつれて雨の中だというのに人が多く、傘やレインコートなど着た人たちで溢れかえっていた。
処刑台には首を固定する装置があるが、不自然にもギロチンが付いていないことや屈強そうな男が斧を持っているわけでもなく、ポツンとただ置かれている大きな置物ようだった。
お城を前にした位置で見にきた人たちの最高尾の中、怪訝な顔で二人は処刑台を見ていた。
「ダント、あれ変じゃないか?」
「そうですね。首を切られる前に普通なら民衆への晒し者にしますしね。いったい何を考えてるか僕にも分かりかねますよ」
ダントは処刑台を見たまま苦笑する。それを横目に見た後、ミフレは眉を寄せ処刑台を見つめた。
雨の音に混ざり、足音が遠く前の方から聞こえてくる。その音が段々と近づき、処刑台を囲んでいた城の方にいる民衆のところが開けた。そこから黒いローブで全身を包んだ男か女かわからない性別の人が先頭に立ち、後ろに兵士と処刑される男性を従えて現われる。兵士に捕われている男性は抵抗するために暴れるでもなく、集まった民衆を冷めた目で見渡した。 一メートル位の高さにある処刑台に立った黒いローブに身を包んだ人は、傍に控えた兵士をさがらせる。残ったのは処刑される男性と黒いローブの人だけになる。二人の背丈は同じ170ぐらいで、黒いローブの人がまだ男性か女性かは分からない。
みんなの視線が二人に向けられる。
見える位置に立った男性は、手首に所々錆びれた金属性の鎖が巻かれ簡単に取れないようになっている。その男性の首をガシッと掴み、黒いローブの人は唯一見える口元を歪ませた。
「雨の中よくぞ集まった、みなの者。これから王女に逆らった男の公開処刑をする。王女に逆らったらどうなるかこの男の末路を見よ!」
雨の中でもはっきり聞こえる高い声を響かせた。その声で黒いローブに全身を包んだ人は女性だということが分かる。
首を掴まれた男性は苦しそう表情を浮かべるも、フッと鼻で笑う。
「何がおかしい?」
「おかしいだと?よく言うぜ。王女が処刑しろと言ったんじゃないだろ。裏で操ってるお前――いや、魔術師が王女の言葉を奪って言わせてるんだろうが!」