雪人
「この減らず口!」

 男の首を掴んでいる手に力を入れる。体が浮かび上がり、顔面蒼白になり息も絶え絶えになっていく。その様子を遠くから見ているミフレの手にギュッと力が入る。何もできない苛立ちに握った手にさらに力が入る。すると、ポンッと肩に置かれる手の持ち主に気付きバツの悪そうな顔をした。
「ミフレ、抑えてください」

「……すまない、ダント」

 二人は処刑台に立つ二人の成り行きをただ見ることしかできないことに、無力さを感じるのだった。


 民衆達は息を呑み、魔術師と処刑される男を不安げな表情で見つめた。 魔術師の女性は今にも死にそうな男性を見て、つまらなそうに腕の力を抜く。首を持ち上げられていた男性が膝をつき、息をきらし何度も必死に呼吸をして、空気を肺に取り入れる。それを冷ややかな眼差しで女性魔術師は見下ろした。

「あんたを殺すことなんてすぐにもできるけど、晒し者にして殺さないとあいつに私が恐い目に遭わされるのよ」

 ずいぶん主観的な意見を目の前で息を切らしてる男性に悪びれもせず言ってのける。息が大分整った男性が立ち上がり魔術師を睨み付けた。

「どうしてお前は王女を操ってるんだ……?」

「あんたさぁ、私がわさわざそんなこと答えると思う?」

 馬鹿じゃないといった顔で女性魔術師は嘲笑うように男性を見る。そして何か思いついたように口元を吊り上げた。男性はそれにぞっとするような悪寒が背筋に伝わるのを感じた。

「特別に教えてあげるわ。それは本当に簡単な動機なのよ。ただ、面白いし刺激があるからやってるだけよ」

「なっ……!ただそれだけのために民衆が苦しみ、王女に逆らった罪で残虐の限り人を殺すのか!?」
「勘違いしないで。私は人を沢山殺していないわ。それに、此処にきたのは半年前よ。私にそんな事言うのはお門違いよ。わかったかしら?もし文句が言いたいならあっちの人に言ってくれない。あいつが王女を操ってんだから」

 女性魔術師が背後に聳える高いお城のテラスを指差す。それにつられるように男性はテラスを見た。その先には王女と、その傍に立つ女性魔術師と同じように全身を黒いローブが覆っている魔術師がいた。男性は目を見開き驚愕の表情を浮かべた。
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