雪人

「短気はいけないですねぇ。私に歯向かっていいのですか?ベルライズ騎士団長殿」

「クッ……」

 高圧的であり脅すような魔導師の物言いにベルライズは悔しそうな表情で睨み付ける。それを愉快そうに見て、魔導師は姫へと近づいた。

「あなたは立場をわきまえてください。いつでも私が姫を殺せることを分からないのですか?それ程馬鹿でもないでしょうに。そうそう、大臣達は戦争に賛成でしたよ。彼らは権力に飢えてますからね」

 魔導師は姫の首を掴みながらベルライズを見て、嫌悪を相手に抱かせる笑みを口元に浮かべる。細く白い首を掴まれている姫は苦しそうな表情などせず、痛覚などないように無表情に魔導師を見る。それを歯痒そうに見ていたベルライズは悪態を吐いた。

「くそがっ!」

「それではこれで失礼します、姫。ベルライズ騎士団長殿は可愛い姫の子守でもしといてください」
 姫の首から手を離した魔導師は愉快そうに笑いながら部屋から出ていった。それをベルライズは憎悪に満ちた瞳で見つめていたのだった。


 姫の部屋から出た魔導師は、すぐ前の壁にもたれかかっている全身を黒いローブで覆っている人物を見て、意外そうに声を掛ける。

「おや、いたんですか。魔術師さん」

「相変わらず気に障る喋り方ね。虫酸が走るわ」

「それはそれは、最高の誉め言葉をありがとうございます」

 魔導師は優雅にお辞儀をして、口元に笑顔を浮かべる。それを見て嫌悪するように魔術師は顔を横に向けた。何を考えているのか分からない魔導師を見ないようにぶっきらぼうに口を開く。

「戦争するって本当なの?」

「盗み聞きしていたのですか?まあいいでしょ。確かに戦争しますよ。それが何か?」

 魔導師は悪びれた様子などなく当たり前のように言う。言われた魔術師は何故か自分が間違ったことを聞いたのかと思ってしまう心境になった。でも、すぐにその思いを振り払い、戦争という悲惨な事態が起こらないよう魔導師に反論する。

「戦争するのは私たちの任務には入っていないわ。あくまで地国の王都グライドアースを支配することだけよ。意味の無い戦いは避けるべきよ」


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