雪人

 カサッと草を踏みしめる音が闇の中で何処からか聞こえ、それを合図に何かがルイの方へと駆けていった。地面から伝わる振動で相手が来るであろう方向を見て、魔力で形成した氷の剣で構える。地面から伝わる振動を察するに、そろそろ相手が来る頃だと思い、目の前に相手がいつきてもいいように注意を払う。しかし、数秒待っても来ないことにルイは訝しげな表情をする。全く前方から来る気配がない。だけど、前方から確かに振動がここまできている。一体どうなってるんだと毒づきたくなるのを抑え、冷静に考える。が、すぐに不意によぎった嫌な思考に思わず言葉が漏れた。
「まさか……な、そこまで――!」

 ザワッと後ろから嫌な視線がルイの背後に纏わり付いた。すぐに急いで振り返る。目の前には巨体をしたレッドウルフの赤く充血している瞳がルイを捉えている。獲物を今にも切り裂こうと鋭利な爪を振り下ろしている所だった。



ドオォォン!



 黒一色に染まる世界で大地を揺るがす大きな音が響いた。地面に生えている草や砂が舞い上がり視界をさらに悪くしている。
 ルイは当たる直前に一瞬で後ろへと跳躍していた。滞空した状態で視線は鋭利な爪が振り下ろされた場所を見ている。体は巨大になり脳もそれに伴って大きくなっているのはわかっていた。だが、前に遭遇したときより賢くなっているのことにルイは胸中で驚いていた。何故かというと、一体を囮として振動を大地に与えて相手に場所を特定させる。その場所へと相手に視線を集中させた背後にもう一体が隙をついて攻撃する。普通ならこんなことはできない。魔物が連携して攻撃することは、今までの経験からするとルイの中ではありえなかった。心の中で舌打ちし、滞空した状態で次の行動を考えようとした矢先に、背後から空を切る音が聞こえ振り返る。またしても巨体のレッドウルフがルイ目がけて鋭利な爪を振り下ろしていた。
 キィンと金属音が闇の中響く。避けるのは無理と判断したルイは滞空したまま爪を氷剣で防いでいた。そしてすぐに、レッドウルフからの力を利用して、爪を弾くとその反動で後方へと着地する。
「二体か……? いや、まだいるな」

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