雪人

 暗くなった辺りを見回して、ルイは胸中で舌打ちした。今すぐ風を発生させて砂煙を吹き飛ばしてもいいが、火玉が消えてしまってはもとも功もない。折角明かりを設置したのに、今は薄暗くなってしまったことに対する油断や驕りが招いた結果。魔力を火玉に送り続けていた状態で、戦っていたからそれに繋がったわけではない。自分はどうも、余裕綽々に振る舞ってしまうのをまだ直せていなかった。
あんなことが遭ったというのに……直も自分は。驕易するのをどうやって直せばいいんだ……
地面から伝わる震動がそれ以上考えることを許さなかった。
 火球を放っていないレッドウルフがルイのもとへ駆けてきていた。地面へと視線を落としていたルイはレッドウルフに視線を移し、立ち上がる。手には氷剣が握られていた。
 薄らと見えるその姿の方を向き青白い膜に覆われていて、刀芯が見えない速さで横に一閃する。

「一式“破風”」

 真空の刄が風を切り裂きながらレッドウルフ方へ速く飛んで行く。それに気付いたレッドウルフは切瑳に横に跳んで避け、すぐにルイのもとへ駆けようとしたが、見失い立ち止まった。
ヒューと空を切る音が上空から聞こえ見上げる。そこでレッドウルフの意識が断たれて絶命した。分厚い首元がスライドするようにグラッと崩れ落ちた。噴水のように湧き出る緑の体液。止まることを知らない魔物の血。湧き出る水のように吹き出す緑の体液を出させている首元めがけて、ルイは着地すると同時に氷剣を投げ付けた。
 パキッと音を立て、首元が凍り付いた。血管が凍り付き、血を吹き出す場所が塞がる。そして、首の無いレッドウルフが鈍い音を出して倒れた。 これで残り二体となったレッドウルフ。
 ルイの手にはまた魔力で形成された氷剣が握られている。砂煙も戦闘している間に霧散し、火玉の明かりが地面を照らせるようになっていた。
 二体のレッドウルフはルイを囲むように周りを駆けている。それを冷めた眼差しでルイは見つめた。
 速さが増し、普通の人なら目が追い付けなくなるスピードで駆けていたレッドウルフ二体が、地を這うようにルイの左右から襲い掛かった。
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