雪人
 ルイは開口一番に主旨を伝えた。それに一早く反応したのはミフレだ。

「ちょっと待てよ! どういうこと何だ?」

 椅子から立ち上がり眉間に皺を作り、茶色い瞳が揺れる。訳が分からないといった表情でミフレは見た。

「強化されたレッドウルフが五体もこっちに寄越されたんだ。これを偶然だけで片付けれると思うか?」
 険しい口調でこの言葉は吐き出された。ルイは王都に繋がる階段を出せと言いたげな視線をダントに送る。気付いたダントは張りつけていた笑顔を消し去り立ち上がる。すぐにレバーを押しに部屋へと歩きだす。が、ミフレに腕を捕まれた。

「ダント……私もここに残るよ……」

「おい、本気で言ってるのか? ミフレ」

 ルイは険しい顔付きでミフレを睨み付ける。

「本気だよ。ルイの言う通りならアジトが気付かれたんだよな。だとしたら、また来るじゃないのか、強化されたレッドが……その時にアタシがいないと誰がそいつを倒すんだ……」

 弱々しく紡ぎだされた言葉は、とても今までのミフレとは思えなかった。瞳を伏せ、悲しげな表情で俯く。部下が一人亡くなり、神経が過敏になっているんだろう。
 ミフレの腕にそっと優しく手が添えられた。顔をその人物に向ける。

「リーダー、僕達のことなら大丈夫ですよ。普段はあれですが、ラキアはやるときはやる男ですから」
 ミフレに安心させる笑顔をダントは浮かべる。捕まれている腕を優しく振りほどき、レバーを押しに部屋へと入っていった。
 ギギギッと石のテーブルが擦れる音を生じさせながら、ずらしていく。そこから、露になった王都グライドアースに繋がる階段。

「エレミール行くぞ」

 淡々とした足取りで階段へとルイの姿が消えていった。戸惑った表情でミフレを見て、慌ててルイの後をエレミールは追い掛けた。
 ダントが部屋から出てきた。

「ダント……本当に大丈夫だよな……?」

 不安な表情でミフレは見つめる。

「ええ、大丈夫です。リーダーが帰ってきた時、皆笑顔で迎えますよ」

「馬鹿やろ……」

 ミフレの迷っていた表情が消え去り、決意を決めたそれへとなった。

「じゃあ、行ってくるよ」
 手を上げ、振り返り急いで階段へと消えていった。それを何とも言えない表情でダントは見つめたのであった。
< 154 / 216 >

この作品をシェア

pagetop