雪人

 王都グライドアースの西地区にあたる貧困街と娼婦館街の間に、誰にも使われていない古びたある二階建一軒屋があった。窓の縁には灰色の埃がびっしりと溜り、ガラスには白く濁った汚れが一面に覆っている。蜘蛛の白い糸が木製で作られた柱の四隅に張り巡らされていた。階段には木が腐敗したような後があり、上ろうとするとギシギシと音を立てて、今にも壊れそうである。地面には誰かがいたであろう最近にできた足跡が残されていた。人の住んだ形跡がなくなってから、何年もの歳月が経っていることを伺わせる家だった。
 ゴトンッと誰も居ない寂れた家で何かが外れる物音が立つ。階段の裏にある少し大きめの板が外される音だった。
 そこから肩ぐらいの髪の長さをした茶髪の女性が這い上がって来る。それに続いて、こちらも同じく肩まで伸ばしている水色の髪をした女性に、肩に触れるぐらいの珍しい白銀色の髪をした青年が家に上がった。

「凄い家だな……」

「本当にね……」

 髪が白銀色の青年――ルイは辺りの荒んだ状態で放置された家を見て、思わず呟きが零れた。それに同感といった風に、髪が水色の女性――エレミールが頷く。それを聞いた茶色い髪をした女性――ミフレが苦笑した。 三人はなんとか夜明け前に王都グライドアースに着いたのだった。

「それにしても、ひどい家ね。今時木製で作られている家なんて滅多に見ないのに」

 エレミールは空中に埃が舞っているのを嫌そうな顔をして、口元を服の袖で覆って見回した。
 エレミールの言ったとおり世界の家々は、今は煉瓦の家や鉄筋コンクリートで作られているのが主流であった。それなのに、未だこんな家が存在するなんて、ルイは違う意味で驚いていたのだった。
「これからどうするの?」
 エレミールはミフレを見る。
「そうだなぁ……一先ず、前に話した酒場に行こうか」

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