雪人
 魔力で精製した炎を使い、薄暗い地下通路を三人が歩いていた。仄かに前方を照らし、長い一本道に足音だけが静かにこだまする。王家が使う抜け道をレイディアに教えてもらって歩いているが、わざとこの道を進ませ敵を待ち伏せさせている可能性もなくはない。それでも三人はその可能性が無いことを信じている。いや、信じているというより直感的にわかっていた、の方が三人には当てはまっていたのもかもしれない。
 長い一本道にも漸く出口が、ではなく、行き止まりが見えてきた。
 灯りが照らし示す先は行き止まり。
「ここで道終わってるんだけど……」
「どういうことなんだ。一本道だから迷うはずが無いのに……」
 ミフレとエレミールが、お互いの顔を見て困惑した表情をする。もしかして……はめられた!と疑心が浮かび上がるのもつかの間、上から「早く来いよ」と不意に声が掛かり、派手に驚く。
 言うまでもなく声の主はルイであった。
 人一人通れる正方形の上の壁が刳り貫かれて、その穴からルイが訝しげな顔を覗かせている。
「何驚いてんだよ。……もしかして、行き止まりと勘違いしたのか?」
「そ、そんなわけないよな、エミルちゃん」
「そ、そうね。もちろん違うわよ、ね、ミフレちゃん」と、ぎこちない笑顔を作る。
 ここまで二人とも分かりやすい反応をされるとルイも、何も言えないのだった。
「とにかく上がってこいよ。昇れるように足をかけられる場所があるから」
 ルイの言葉で、今まさに行き止まりの壁に足をかけられる出っ張りがあることに気付いた二人は、何ともいえない空笑いを浮かべる。
 ご丁寧に色が他のより白い色で見分けやすくなっていもいた。
 足を掛けて二人が上がった先には、扉が一つあるだけの小さな空間があった。扉を出ると階段の中からでたらしく、一、二階の巨大なホールに着いた。
「静かだね」
 エレミールが三人の思ったことを代弁する。
 そう、静かだった。息遣いや鎧の擦れる音など一切の音がなかった。
 兵士のいる気配が感じられなかった。
 まさに、もぬけの殻といった表現が辺りには当て嵌まる状況だった。
 ここまで静かだと、何かあるんじゃないかと思いたくもなるが、それでも三人には進という選択肢しかない。例え――誰かの命が絶たれようと。
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