雪人
 辺りを見回すと、真っ赤な絨毯が四方に伸び、天井には大きなシャンデリアが三つあり、離れた三角形の位置で配置されている。
 二階へと繋がる階段にも赤い絨毯が敷かれている。そこまで三人が来ると、階段の上がった先に、一人の黒いローブを全身に覆った性別の分からない人物がいた。
 ルイたちを見据えたままゆっくりと、一段、二段、階段を降りる。黒いローブが足元まで隠し、ユラユラと左右に揺れる。
「ようこそ、グライドアース城へ。ジハードのみなさん」
 ピンと張ったような透き通る声が一、二階ホールに波紋のように広がる。
「貴方たちが何処から王都に入ってきたのかは分からないけれど、騒ぎを起こして居場所を知られてしまっては、潜入した意味が無いわね。それとも……あの騒ぎも計算の内かしら?」
 口元が弧を描くようにほくそ笑む。
「ふっ……あれも計算のうちだ。お前、なかなかやるな」とルイが言ったので、
「いやいや絶対違うでしょ」と左右に手を振るミフレとエレミール。
「この位で与太話は止めましょうか」
「そうだな。じゃあ、そこを退け」
 切り替えの早い話に、ミフレとエレミールは唖然としてついていけてなかった。
「退いてもいいわよ。ただし……私を倒してからね、三人組さん」
 バサッと音を立たせ、全身に纏っていた黒いローブを豪快に脱ぎ去った。
 露になった容貌は、胸辺りまで伸ばしたブロンド髪を内側に緩く巻いた女性だった。吊り目の二重に高めの鼻梁。スラリと伸びた手足が服の上からでも分かるスレンダー美人。
 三人の思ってた敵とは、かなりかけ離れていた。だが、
「ミフレ、エレミール、こいつの相手頼むな」
 ブロンド髪の女性の背後からルイの声が掛かる。どんなときも冷静沈着なルイには、今の動作で背後に移動するのは苦もなくできたのだ。
「え、な――!」
 驚いて女性が急いで振り返ると、ルイが既に二階正面扉へと手を掛けている所だった。
「逃がさない、よ!」
 氷の鎌を瞬時に形成し身体を捻って反動をつけて、勢いをつけ投げ付ける。刄尖から小さな氷刃が辺りに飛び散りながらルイの背後へ切り裂こうと迫る。
 パリン、何かのガラス細工が割れる音のような響き広がる。
「う、冷たっ!」
 続いてミフレの間抜け声が出る。手を上下左右にブンブン振り、冷たさをとろうとしている。
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