雪人
 腕を水平に保ち、回転を始めたミューレは冷ややか笑みを口元に浮かべた。次第に回転スピードが増していき、両手に持つ鎌がヒュンヒュンと風を切り裂く音を鳴らし始める。
 鎌が生じさせた風は、地面に散らばっている土や岩片を、上空へと巻き上げた。
「くらい、な!」
 回転速度が最長を迎えた時、ミューレは二つの鎌を解き放った。二つの鎌は左右に別れて、弧を描くように高速回転しながら岩の密林の中、沢山の巌をバコンッバコンッと連続的に破裂音を鳴らし、破壊していく。
 二つの鎌が上下に交わる時、大半の岩が破壊された。何処かの荒地地帯かと疑ってしまう光景が一二階ホールに広がる。
 鎌は高速回転を続けたまま、ミューレの場所まで戻って来る。それを難なく両手に納めるけど、二つの鎌の勢いに身体が少しぐらついた。
 態勢を立て直し、ミューレは半分位に破壊された岩を見渡した。全ての岩を壊しきれていなかった。ポツポツと少ないがまだ残っている巌がある。そこのどこかにミフレが居るのだろうと思い、獲物を見つけた狩人のように唇を舐めた。
 ミューレが一つの大きな岩に歩み寄った。ブロンドの髪が肩から背中に落ちる。
 自分の背丈よりも大きい石鎌を、片方だけ軽々と振り抜いた。
 バコンッとまた一つ岩が粉砕され、ミフレの居場所がまた一つ減った。
「いい加減出てきなさいよ」
「……年増」
 ミフレの一言にミューレの額に青筋が浮かび上がる。
「そのブロンド髪、どこかで見たことがあるのに思い出せないんだよな」ミフレのもどかしそうな声が響いて広がる。
「どこでよ?」とミューレが尋ねた。辺りを見回しながら耳を澄まして声の発生源を探ろうとしている。
「うーん……ん? あ、そうだった! ルイと一緒にいた女の子!」
 胸につっかえていたもどかしさが、取り払えたような晴れ晴れした声でミフレは一人納得する。
 それを聞いていたミューレは、訝しそうに片方の眉を下げた。
「ルイ? 奥に行ったさっきの美青年?」
「そうだ」
「ルイって人の友達が私と同じブロンド髪をしていたか……」
 ミューレは考え深く耳を澄ましていたけど、何処から聞こえるかはわからなかった。
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