雪人
 城のてっぺんまたは屋上で二人は闘氣を纏って対峙していた。
 闘氣の色はお互いの先天属性に基づいた色をしている。ルイは薄い青に銀色が混ざったのに、ソクラサは茶色の闘氣をしていた。
 闘氣は誰もが使えれるわけではない、一生身に付けることのできないと言われることさえあるのだ。簡単かつ明瞭に言えば、才能に因るところが大部分を占めていたのだ。
 周囲には円柱の長い突起物が三角形の頂点ごとの位置で配置されている。広さは以外にもあり、城の内部と同等の広さがあった。
 ただ、この場所に来るためには跳躍力がなければくることができなかった。
 二人は既に武器を手に持ち、いつでも戦闘できる態勢に入っていた。ルイは氷剣を、ソクラサは刀芯が細い形状のレイピアを持っている。
 二人の間には張り詰めた空気がピリピリとなるかの如く、空気を揺らしていた。
 月明かりの中、二人の影を落とす。
 お互いに動くこと無く相手の動きに注意を払っていた。だがそれも束の間、ソクラサが軸足に力を蓄めて、踏み込んだ。その速度は瞬く間にルイの許まで到達できる程だ。踏み込んだ場所には地面が削れ、蜘蛛の巣状に罅が走っていた。ルイにレイピアで心臓めがけ高速の突きを放った。
 ルイはソクラサのスピードになんなく氷剣でレイピアの突きの軌道をずらし、そのまま滑らすような動きで刀芯から這わせて斬り付けた。
 ソクラサはこちらも軌道を的確に読み、僅かに後ろに下がる動作で剣を躱し、すぐさまレイピアの特化した高速乱れ突きに放った。不規則にかつ変則的な突きは、相手に躱しずらさを与える。
 常人に見切ることは愚か、躱すこさえできない高速乱れ突きを、横移動だけでギリギリの所をルイは躱している。
 傍から見ればルイが一人で動いているように見えるが、見えない突きを躱しいるなどとは到底思いほどだった。
 暫くその光景が続いたが、ピタッとレイピアの動きが止まり、ソクラサがバックステップを四度五度ととった。
 二人は息一つ乱さず、まだまだ小手先調べっといった感じでお互いに戦いながら相手の出方を伺っていた。
 ただ静かに相手を見据える二人は、何処か楽しそうに口元が歪んでいた。好敵手に出会えたような喜びと形容すればしっくりするような笑みだ。
 二人の視線が空中で交わると、今度はルイから先に仕掛けにいった。
< 190 / 216 >

この作品をシェア

pagetop