雪人
仕掛けたルイは予備動作や動く気配すらみせず、音もなくその場を、最初から誰もいなかったかのように消えた。
この動きにソクラサは影だけしか捉えることができなかった。それほどまでにルイの動きが速いのだろう。
辺りの気配を刃のように鋭敏に探っていたソクラサが、不意にしゃがんだ。頭で考えるよりも体が危機的本能に従い、勝手に動いたようだった。
だが、その不可解な行動が功を奏した。
ソクラサが屈んだ瞬間、ヒュっと空気を切り裂くような音が頭上で鳴った。先程まで首が会った場所をルイの氷剣が通過したようだった。
肝を冷やすかと思われる状況なのに、ソクラサの表情は狂ったように愉快に笑っていた。屈んだ態勢から立ち上がり、何処にいるか分からないルイに語り掛けた。
「クックック! 楽しい! これほどまでに楽しい戦いはいまだかつて経験したことがない!」
ソクラサの口元が狂気により歪んだ。ザワザワと周りの風が恐れたかのように騒めく。
「面白い! 私はなんと運がいいのだ!」
ソクラサが狂ったように叫んだその時、ルイの氷剣がソクラサの首へと伸びてきた。確実に捉えて刎ねたと思われたが、氷剣と首の間にレイピアを入れたのだ。
キィンと軽快な金属音が響き、お互いの躰に振動の余波が微弱に伝わる。
すぐさま氷剣を手元に引き、ルイは後退した。
ソクラサを観察するような目付きでルイは冷静な表情で見た。
戦闘開始して始めの頃は穏やかといえば穏やかな雰囲気だったが、今は一変して狂乱者になりかけているようだ。
それに、敏捷性が一撃目に首を狙ったときより対処が素早かった。
それらの思考を一瞬でしたのち、ルイは魔力を右手に集めた。そして口を開く。
「荒れ狂う風は全てを吹き飛ばし、無に還らせる。ブラスト」
呪文詠唱で魔力消費量を抑えたうえに、様子見の風魔法をソクラサに向けて放った。荒れ狂う風を球状に圧縮した風球が周りに突風を吹きながら標的に接近する。
ただ、一直線に進む風球を横に大きく回避しようとしたソクラサに合わせてルイが口を開いた。
「爆ぜろ」
ルイの言葉に呼応するように風球が対象に当たらず、破裂したように弾け飛んだ。中から爆風がもの凄い勢いで吹き付けて、その影響でソクラサの跳んでいる最中の身体に直撃する。
この動きにソクラサは影だけしか捉えることができなかった。それほどまでにルイの動きが速いのだろう。
辺りの気配を刃のように鋭敏に探っていたソクラサが、不意にしゃがんだ。頭で考えるよりも体が危機的本能に従い、勝手に動いたようだった。
だが、その不可解な行動が功を奏した。
ソクラサが屈んだ瞬間、ヒュっと空気を切り裂くような音が頭上で鳴った。先程まで首が会った場所をルイの氷剣が通過したようだった。
肝を冷やすかと思われる状況なのに、ソクラサの表情は狂ったように愉快に笑っていた。屈んだ態勢から立ち上がり、何処にいるか分からないルイに語り掛けた。
「クックック! 楽しい! これほどまでに楽しい戦いはいまだかつて経験したことがない!」
ソクラサの口元が狂気により歪んだ。ザワザワと周りの風が恐れたかのように騒めく。
「面白い! 私はなんと運がいいのだ!」
ソクラサが狂ったように叫んだその時、ルイの氷剣がソクラサの首へと伸びてきた。確実に捉えて刎ねたと思われたが、氷剣と首の間にレイピアを入れたのだ。
キィンと軽快な金属音が響き、お互いの躰に振動の余波が微弱に伝わる。
すぐさま氷剣を手元に引き、ルイは後退した。
ソクラサを観察するような目付きでルイは冷静な表情で見た。
戦闘開始して始めの頃は穏やかといえば穏やかな雰囲気だったが、今は一変して狂乱者になりかけているようだ。
それに、敏捷性が一撃目に首を狙ったときより対処が素早かった。
それらの思考を一瞬でしたのち、ルイは魔力を右手に集めた。そして口を開く。
「荒れ狂う風は全てを吹き飛ばし、無に還らせる。ブラスト」
呪文詠唱で魔力消費量を抑えたうえに、様子見の風魔法をソクラサに向けて放った。荒れ狂う風を球状に圧縮した風球が周りに突風を吹きながら標的に接近する。
ただ、一直線に進む風球を横に大きく回避しようとしたソクラサに合わせてルイが口を開いた。
「爆ぜろ」
ルイの言葉に呼応するように風球が対象に当たらず、破裂したように弾け飛んだ。中から爆風がもの凄い勢いで吹き付けて、その影響でソクラサの跳んでいる最中の身体に直撃する。