雪人

 戦闘開始の合図が鳴り響き、ルイ達の所と反対に位置する場所では一対十というあまりに卑劣な行為と言われてもおかしくない人たちが居た。

「早く来たらどうなんだ雑魚共」

 挑発ともとれる言葉を一団に投げ掛ける綺麗な透き通る水色の髪をした青年が睨み付けるように言う。
 その言葉を受け、一人だけを残した九人は一斉に駆け出した。剣や槍などの武器を手に持ち先駆けた二人は斬り付けるがそれを切っ先合わせて流れるように避け、攻撃してきた二人に腰に差している槍を使わず、鳩尾を目で捉えることができないほどの速さでパンチを繰り出した。
 鳩尾にパンチの衝撃を浴びた二人は一瞬のことで理解する間もなく、場外へと吹き飛ばされる。



ドゴーーーンッ!!




 場外にある壁に叩きつけられた二人はバタンッと糸が切れたように地面に倒れ気絶する。
 それを全く何事もなかったように振る舞う青年に向かって行った残りの人達はピタッと足が立ち止まり、恐い物を見るような怯えた表情をして、自ら舞台から降りていこうとする。
 一対十という卑劣な行為をあっという間に終わらせた青年は見向きもせず、じっとただ一点に視線を向けている。
 青年の視線の先には先程一人だけ攻撃に行こうとしなかった少しボサボサの緑髪をした男性が佇んだままじっと同じように青年を見ている。
 二人の視線が交わるな否や、青年が目にも止まらぬ速さで肉迫する。

「おいおいこりゃまいったね」

 間の抜けそうな言葉とは裏腹に表情は全くもって困った様子を露ほどだしていない。
 青年は槍の間合いに入ると常人には捉えることすら見ることもできない突きを心臓目がけて射ぬく。それを腰に差していた剣を素早く抜き横に受け流し、隙ができた横腹を反動を付けて蹴る。それに気付いた青年は無理な体勢にもかかわらず、蹴に当たる前に素早く難なく横に跳ぶ。僅かこれだけの動作が周りにとってみれば何が行なわれたのかわからない。それ故、この二人はそれだけに強いことがわかる。
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