雪人
「おいおい今の避けちゃうのかい。殺しちゃいけないのに迷わず心臓を突くとはこりゃ更に参ったね」

 気の抜けそうな声を出し、ゴシゴシと頭を掻きながら唸る。
 それとは対照的に今まで無表情か睨み付けるような顔つきしかしなかったのに青年は水色の髪を少し揺らしなぜか口を吊り上げる。

「こりゃまた戦闘狂とはやっかいな相手だね」
 それを見たボサボサ緑髪をした男性は相変わらずマイペースに呟き頭をポリポリ掻く。

 戦闘狂とは、戦闘をすることによって快感を得ようとする狂った人のことを指す。なぜ戦闘狂になるのかという要因は、負の感情が大きく影響している事しか未だわかっていない。ある説にはこういう事が書かれている。
“大切な人が目の前で殺された時に深い悲しみや無力感からくる負の感情が原因で戦闘狂の症状になる”
所謂、強さを求めるために発狂すると言う事なのだろうか…
解明するにはまだ先のことになるだろうと思われる。

 話を元に戻すと、闘技場の舞台では戦闘狂になっていると思われる水色の髪を肩ぐらいまで伸ばした青年とボサボサ緑髪をした男性はどちらも動かず、お互いの動きに注意を払っている。
 暫らくその状態が続いたが、その均衡が破られ、またしても青年が先に動きだす。それは先程の速さとは比較にならないスピードで緑髪の男性の背後に回りこみ素早く槍で突くが、そこには既に居なくて空を斬ることになる。

「ウォーターガン」

 青年はお構いなしに呪文を詠唱無しに魔法名を紡ぐ無詠唱で唱えた。青年の周りに幾つもの小さな水球が瞬時に出現し、四方八方に飛び散る。その威力は拳銃よりも速さや殺傷能力がある。

「ウインドシールド」

 青年の頭上から詠唱破棄の魔法を唱える声が聞こえてくる。地上から10mも空中の地点に瞬時に槍から避けるため跳躍したようだ。
 ボサボサ緑髪男性の周りに渦巻く風に水球弾が当たるが、吹き荒れる風に遮られただの水になりポタポタと地面に引き寄せられるように水滴が落ちる。
 ストッと地面に着地する音が鳴り、男性は水色の髪をした青年に視線を向ける。

「お前、強いな。名前は」

 青年は少しだけ笑っているような表情をして獲物を見つけたような目付きで、頭をポリポリ掻いている男性に向けて初めてまともな言葉を言う。
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