雪人

 中央ホールに女性の声が響き、ルゲイエに振り下ろしていた剣をお腹の寸でのところで止め、ルイに無表情だった顔が無くなる。
 悲痛な叫びでルイを止めた人物は中央ホールが血の海と化した光景に目を背けたくなるのを我慢し、血を踏むのも気にしないで急いで駆け寄る。 ルイは二階に上がってきた人物に驚きを隠せずにいる。水色の綺麗な髪を胸ぐらいまで伸ばし、透き通るような白い肌に二重で目が大きく小顔な女性が悲痛な面持ちでルイを見ている。そして近寄り、パアンと頬を打った。
 打たれたルイは顔が横に向き、居心地を悪そうにしている。
 打った人物は叩いてジンジンする手を見る。そよりも心がジンジン痛むの抑え、ルイに抱きつく。
 唐突に抱きつかれたルイは驚き、抱きついてきた女性の名前を思わず呼ぶ。

「……エレミール…」

「…ルイ。殺しはしないって言ったじゃない…どうしてしたの?何かあったの?」

 ルイの胸に顔をうずめていたのを離し、顔を上に向け、寂しそうで何処か辛そうな表情で問い掛ける。
 ルイは相変わらず横に顔を向けたままでエレミールに顔を向けようとしない。

「何もない。お前こそどうしてこんなとこにいるんだ?謹慎中じゃなかったのかよ」

「リーダーに無理言ってここまで送ってもらったのよ」

 エレミールは苦笑しルイから体を離した。

「そうか…でも、お前は本部に戻れ」

「どうして!?許可はちゃんともらったのよ!あなたにそんなこと言われて帰ると思う?」

 横を向いたまま冷たく言い放つルイにエレミールは睨み付けて憤慨したように言う。

「帰らないだろう。だが無理矢理帰らす方法もある。それにこの任務は俺一人で十分だ」

「いつも一人で任務して、たまには人を頼ったらどうなの?私は絶対に帰らないわ!」

「帰れ…この任務はお前が思っているようなレベルじゃない。はっきり言って足手纏いだ」

 冷たく突き放すように言い、ルイは先程から後退して離れていくルゲイエの方に歩いていく。
 厳しい顔でルイの言葉を受けたエレミールは殺そうとしていた人物に近寄っていくルイに気付くと、急いでルイの前までいき立ちはだかる。
 退けと目で訴えかけるルイに退こうとせず、エレミールは出血がひどく死にそうなルゲイエに手を向け言葉を紡ぐ。
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