雪人

 マスターはやっぱりといったような表情でルイを見つめる。そして、どうして疾風の銀狼がこんな辺鄙な町にきているのかわからない。噂ではよく聞いたことがあり、賞金首の間では危険示されている。マスターは職業がらか聞きたくなり、ルイに尋ねた。

「どうしてしっぷ…じゃなくてルイ君はこちらにきたんですか?」

「それはちょっと話せない」

 ルイはきっぱりと言い放ちこれ以上聞かせない雰囲気を醸し出す。
 マスターはその雰囲気を察してこれ以上聞かなかった。

ジハードと言う組織について補足して置くと、簡単に言えば傭兵みたいなものだ。詳しく言えば、依頼され、任務を行なう人数や適任者を選ぶ。暗殺や敵国にスパイなどの依頼は請け負わない。
ときには国同士のいざこざや戦を止めに入ったりと中立的な立場を請け負う。ジハードにはランクがあり、Sクラスから異名が持たされる。階級は賞金首と同じだと思ってくれていい。後々詳しく知られるのでこれ以上語るのは止めよう。

 話を元に戻すと、マスターからウイスキーを酒が弱いのに飲んでつぶれたメリルはカウンターに突っ伏した状態で何かごにょごにょ言っている。 それを視界に入らないようにして、ルイはエレミールの方を向き話している。

「そろそろ宿屋に行くか?」

「そうだね、もうすぐで日付が明日になるし……だけど、どうするのメリル姉のこと?」

 突っ伏した状態でブツブツ言っているメリルに呆れたような視線を向けてルイに聞く。
 ルイも同じように呆れたような視線を向け、溜め息を零し仕方なしに言った。

「俺が送るよ。こんな状態じゃ自分で戻れないしな」

 諦めたように言い、突っ伏したままのメリルに肩を貸して近くのテーブルまで行き、椅子に下ろしてルイは呪文を唱える。
「時の狭間は我の望む道を作り、空間に歪みを与える。ディメンションゲート」

 唱え終わると、鼾を鳴らし始めて寝てしまったメリルの周りが陽炎のようにぼやけだし、体を包み、段々と見えなくなっていった。
 それを見届けたルイは悪意に満ちた笑みで、メリルが居なくなった場所を暫らく見て、普段の表情へと変わりエレミールの隣の椅子に腰掛ける。 そんなことは露知らずエレミールは戻ってきたルイに不思議そうな表情で疑問を投げ掛ける。
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