【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



話終えた頃には、
温かかったパンたちも
少し冷めかかってて
頼んだホットコーヒーも
ぬるくなってた。



その後は、
試験の話題になって
雄矢や、
勇生の恋の話題。



勇生は高二の時から
付き合ってる
彼女がいて、

雄矢には……
中学の時に家の行事で出会った
女の子が気になってるらしい。





そんな話を続けながら
食事を済ませて、
お店を後にしたのが
一時間後くらい。




その後、商店街をまた
三人で歩きながら
ひと時の、羽を休める。




この時間が終わったら、
高校の卒業。



そして……
受験本番。




未来を
掴み取るための
大切な時間だから。






高校一年生を最後に、
出入りしなくなった
ゲームセンター。



その前で
少し立ち止まって
見つめては、
入ることなく歩き始める。









すると、
何処からともなく
響き渡る、
ピアノの音色。



そして
エレクトーンの音色。





音色に惹かれるように
商店街を歩いていくと、
ウィンドウ越しに
演奏をしている人が二人。






楽器店の制服を着て
デモ演奏を広げる
一人の姿に、
思わず立ち止まる。










……見つけた……。






彼女だ……。






ガラス越し、
立ち止まって
魅入るように
見つめる。






二人の演奏が
終わって、
ピアノだけの演奏。




何度か耳にしたことがある
有名なクラシックの曲を
三曲ほど演奏して、
彼女は一礼して、
姿を消していった。


続いて始まるのは
エレクトーンの演奏。




立ち尽くして
その場から動けなくなった
俺の隣には、
雄矢と勇生。





「「恭也、あの人か? 」」



声を揃えてタイミングよく
問いかける言葉に
ガラスの向こうを
見つめながら
小さく頷いた。




「ってか、綺麗な人じゃん。
 エレクトーン上手いよね」


「おいっ。

 勇生、そっちじゃないよ。
 ピアノ弾いてた人」



思わず声を荒げて
訂正してしまう。



「ピアノの人だと、
 年上そうだよね。

 エレクトーンの人よりもさ」



確かに
そうかもしれない。



だけど、
年齢とかは
関係なくて。



「だったら、ちょっと
 聞きこんでみようよ」



頷くひまもなく、
二人に連れられて
店内に入っていく。

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