【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

8.現れたライバル -神楽-




恭也のお父さんが
天国に旅立って一ヶ月。


恭也は忙しいのか、
なかなか自宅に帰ってくることが出来ないでいた。


仕事の関係で、昼間は介護ヘルパーさんを
お願いしていた恭也のお母さんのことも、
今では多久馬医院を守ってくれることになった
勇生君のご両親の言葉に甘える形になっていた。




音楽教室でのレッスンを終えて、
電車で多久馬家の最寄り駅へ。



そのまま帰り道にスーパーに寄って
晩御飯の買い出し。



お買い得商品を狙いながら、
材料を手に入れると、
そのまま多久馬家の合鍵を使って
家の中へ入る。




「ただいま、戻りました。
 神楽です」




そう言うと、
二階から私をゆっくりと出迎えてくれるのは
恭也のお母さん。


そしてお母さんを支えてくれてるのは、
勇生君のご両親。




「西宮寺先生、良かったら奥様と
 食事食べて行ってください。

 あまり凝ったものは作れないですけど。

 恭也、まだ連絡がないところを見ると
 帰ってこれるのかどうか……」




本当は帰ってきたところを、
すかさず抱きしめて、
甘えさせてあげたい。




「あらっ、いいの?

 神楽さんのご飯、美味しいから
 うちの人も喜んでるわよ。

 恭真先生も、
 神楽さんのことは気に入ってた。
 

 なんでこんなことになっちゃうのかしら?」




そう言って勇生君のお母さんは顔を曇らせた。




それと同時に脳裏に霞むのは、
文香の言葉。


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