【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】









神楽さんへ



いつも有難う。

今日の夜、
少し出掛けたいところがあるんだけど
一緒に来て頂けませんか?



恭也母








恭也のお母さまからの
一通のメール。








おばさまへ



大丈夫です。
車でお邪魔しますね。




神楽







そうメールを返すと、
文香に電話をかけて、
車をかしてほしいと伝える。


高校を卒業する時、
自動車学校に通って、
運転免許はとっていたものの
車を維持するだけの経済力は行かなくて
ずっとペーパードライバーだった私。


使うこともないだろうとさえ思っていた
運転免許の有難みを知ったのは
恭也のお義母さんが倒れてから。



その頃から、時折
文香に頼んで車を運転する練習をさせてもらって
おじさまが他界されてからは、
こうして、おばさまが出掛けたいところを
一緒にまわってる。



恭也のお母様にも、
私は受け入れて貰えてる。



そう思えることが、
ある意味私にとって大きな心の支えでもあったから……
婚約者の祐天寺昭乃が何をしてきても、
どんなことを言って来ても、
ずっと信じていられると思った。




ピアノの蓋を閉じて、
自室に戻ると、
そのまま着替えを済ませて出掛ける。


向かう場所は、
文香が住む家。


そこで文香の愛車を借りて、
恭也の自宅へと向かう。




医院の駐車場に車を止めて
チャイムを鳴らす。




「はぁい」



そうやって姿を見せたのは、
多久馬医院の看護師をされている
勇生君のお母さん。


「こんにちは」

「あら、神楽ちゃん」

「おばさまいらっしゃいますか?」
 
「えぇ。
 奥様はお部屋にいらっしゃいますよ」



そう言って私の中へと招き入れた。

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