【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】


幸せそうな花嫁の傍、
全てを包み隠して、
同じく幸せな花婿を演じ続ける。




全てが終わって
ホテルへと戻った俺の部屋に、
祐天寺昭乃が押しかけてくる。
 




結婚したのだから、
当然と言えば当然だったが
自らの体を俺に押し付けるように
求めてくる行為にすら、
吐き気を覚えた。




お腹の中の子供を理由に、
俺は距離を取って、
一人、ベッドに沈み込む。






神楽以外……
抱けるはずないんだ……。





三日後、俺たちはヨーロッパに
ハネムーンへと出掛け、
一週間の時間を経て帰国した。






多久馬総合病院の本館の一部が
完成して、中を視察する。



まだ完成までは遠いけど、
親父の夢が確実に現実になろうとしていた。






俺と祐天寺の結婚に反対した
母親は、ある日何も告げずに
勝手に申し込んだ、施設へと姿を消した。




そこに何度、足を運んでも
頑なに俺を拒み続ける母親は
会おうとはしなかった。




多久馬医院は、相変わらず
勇生の両親が守ってくれて、
俺は、祐天寺が俺たちの新居へと手配した
一軒家で生活することになった。



常に監視カメラで追われ続ける屋敷内。



朝起きて、どれだけ豪華な食事が並んでも
そこに……当然ながら、
愛しいアイツは居ない。
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