【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】









季節は過ぎて、
その年の11月。


倫華さんたち一家と出逢って、
3か月が過ぎようとした頃、
倫華さんのお腹の中の子は、
一足先に産声を上げた。




瞳矢(とうや)と名付けられたその子は、
多分、この子にとって大切な友達になってくれるはず。




お父さんこそ、知らない子供にしてしまうけど
大切なお友達はプレゼントしてあげられるわね。





目立ち始めたお腹に、
ポコポコとした胎動を感じながら
瞳矢くんを見つめる。








翌年の二月。




檜野家族に支えられながら、
私も大切な我が子を産んだ。






親が最初にプレゼントすることが出来る名前。






恭也さんから一文字を取って。


そう言うのも考えなかったわけじゃないけど、
それではあからさまな気がして。




真っ直ぐな人。


父親がいないことを知っても
母の愚かさを知っても、
真っ直ぐに育ってほしいと
そんな願いを込めて。





真人(なおと)と名付けた。




真人の(なお)が直(なお)ではなく、
真実の真にしたのは、
恭也のお父様の漢字が、真だから……。



貴方の漢字を貰うことは出来ないけど、
貴方の大切な家族と過ごした時間は
私にとっても、この子にとっても
宝物になってくれるはずだから……。


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