【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】





お風呂の中で疲れて
眠ってしまった真人を抱えて、
パジャマに着替えさせると、
ゆっくりと私の布団の中に寝かせる。


柔らかい髪を撫でて
そのまま額にキスをすると
一冊の本を鞄から取り出す。






私に関係あるわけじゃないのに、
恭也君が出ているからと言うだけで
購入してしまった、
サイエンス系の雑誌。


本に映る彼の顔を指先で撫でながら
その記事を追いかける。








恭也君


元気そうで良かった……。
私も元気よ。


真人が少しずつピアノ上手くなってきてるのよ。



何時か真人も、
私たちの大好きな『愛の夢』にこめられた
想いを気が付いてくれるかしら?









生きることにいっぱいいっぱいだった私と真人を
この町の人たちは、優しく支えてくれた。


この町を選んだから、
私たちは此処まで生きて来れたのかもしれない。



そんな風に思えた時間。




今も貴方を思い続ける心を
湖に沈めて、
私は真人と前を向いて歩いて行くから。


前を向いていれば、
明日は必ず来るから。




真人の隣、
ゆっくりと体を横たえて
明日に向かって動き出す。


夢の中だけでも、
貴方に出逢えますように。

そんな祈りを込めて。












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