【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



「ここは、24時間完全看護体制。

 看病に疲れた家族の顔は、
 患者さん精神状態にも影響を及ぼすから
 面会時間は決められた時間のみ。

 神楽さんが真人君に面会したい時は、
 俺か勇生に連絡して。

 その時の神楽さんの状態で、
 面会時間は決めさせてもらう。

 後で真人君の入院中に、
 神楽さんに生活して貰う部屋を案内する。

 この病院には、遠方からの入院患者の家族の為の
 宿泊施設も併設している」



淡々と事務的に話す内容。


話す内容は全て実際にあるものだけど、
今回はちょっと内容が違う。


神楽さんに休んで貰おうと思うと
している部屋は、
俺がプライベートで使っている部屋。



多久馬医院の跡地に建てた
マンションの最上階。

その下の階には、確かに遠方患者の家族の為の宿泊施設として
使うことが予定してあるから満更嘘ではないと思いたい。


ただ一つ、宿泊施設になくて
俺の部屋にあるのは、スタインウェイのピアノ。


神楽さんにとってのピアノの存在の大きさを
一番近くで知っているから、
真人君の闘病中も
自分を支える糧になってくれればと思えた。



俺がもっともらしく言い切ったその話を
彼女は渋々承諾するように頷く。



「じゃ、朝食にしよう。
 美雪さんがせっかく作ってくれてるから」


紙袋から水筒を出して、
二人分のコーヒーを淹れる。


そして3種類のサンドウィッチを
神楽さんの紙皿へ取り分ける。
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