【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




携帯から再度、文香にリダイヤル。


すぐに電話ら出ると思ったのに、
文香の携帯は通話中で繋がらない。





溜息を零して、携帯電話を閉じた。





合コンかぁー。

苦手なのよね……。





グランドピアノをゆっくりと閉めて
電気を消すと、
防音室から自分のへと移動した。






自室に戻って、
気が乗らないままに
メイクポーチから化粧道具を取り出す。





せっかく……お風呂に入って、
すっぴんに戻ったのに。



またメイクしなきゃ……。






何時ものように、
ベースメイクから手早く終えると
髪の毛をクルクルっと丸めて、
無造作にバレッタで止める。



止まりきらない髪の毛が、
パラパラとバレッタから零れ落ちる。






クローゼットをガラリと開けると、
地味な服を取り出した。





気合をいれる必要なんてない。

だって……私は、
数合わせなんだもん。






Gパンと、
カットソーを選んで身に着けると
鞄を掴んで玄関から出ていく。



18時って言う時間がすでにおかしいのよ。



すでに……17時。

開始までに1時間もないじゃない。

谷が丘までの移動時間は30分。


約束の時間に遅れるのなんて、
自分で自分が許せない性分だから
もう飛び出していかないと間に合わない。





ミュールをひっかけると、
駅までダッシュ。




飛び乗った地下鉄の中で、
ふり乱れた髪を手櫛で軽く整える。





約束の時間の10分前には
着いておきたい……。






半ば、焦る心を必死に耐えながら
地下鉄の中で、
ドアが開いたら飛び出せるように
覚悟を決める。






後一駅……。




降車駅のアナウンスが車内に響いて、
ゆっくりとドアが開くのと同時に、
『チェリー』のある改札口へと再び駆け出した。




改札を超えて地上まで駆け上がると、
外は小雨が降ってる。






あぁ-、ついてない……。






携帯の時計を覗くと、
すでに17時50分をまわり始めてた。




駄目だ。


傘を探してる時間なんてない。
完全に遅刻じゃないっ!!。




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