【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

17.一夜限りの家族旅行 -恭也-



秘密の結婚式。

リズちゃんが作ってくれた
神楽さんの花嫁衣装は、
とても素敵だった。


二人の大切な夜の記念に
カメラにおさめた、花嫁姿の神楽さん。


すでにプリントした彼女の姿を
手帳に忍ばせて、
俺は真人君の退院の朝を迎えた。


結婚式の後、一緒に朝まで過ごしたかったのに
それは彼女に逃げられてしまった。

荷造りがあると言われてしまえば、
何か言えるわけでもない。


翌朝、早々と目が覚めてしまった俺自身に
俺は遠足を待つガキかよっと
自分自身に笑ってしまう。


そのままベッドを這い出して、
カジュアルな私服に身を包むと、
一日分の着替えを鞄に突っ込んで、
病院へと向かう。


勇生に頼んだ今日の役目。


少し早めに院長室に入って、
勤務開始前に、今の状況を把握していく。

一通り、カルテに目を通した後
8時頃に、真人の治療費の精算用紙を受け取って
そのまま支払いを済ませる。

その後も、病院内の簡単な仕事を済ませて
もう一度、院長室に戻った時には
デスクの上に、勇生の文字で「好きに使うといいよ」っと
愛車の鍵が置かれていた。

その鍵をポケットに突っ込むと、
9時半頃、
真人君の病室へと向かった。


「あっ、先生」


ノックをして
ドアを開けた途端に
待ちかねたように真人君は、
俺の傍に駆けて来る。


「おっ、お待ちかねだな」


そう言いながら、真人君を抱きかかえつつも
日課になっているバイタルを確認して
状態を把握して安堵する。
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