砂のオベリスク~第七大陸紀行~





彼女は片っぱしからゴミ袋の口を開け、顔を突っ込んで食べられる物を探し、見つけたら取り出した先から食べた。

絵具がべったりとこびりついたエプロンを膝までたらしていたが、それに汚水がかかることもいとわなかった。

頭よりも大きな赤いベレー帽が、よく熟れたりんごのようだった。



「パンよ。パンがいるのよ。どこかにパンはないかしら」



彼女は尋ねたが、ゴミを捨てた若者は店の中に戻ったあとだった。




きっと若者には、路地裏に彼女の姿しか見えなかったのだろう。
私はやはり、気づかれなかったのだ。





< 102 / 108 >

この作品をシェア

pagetop