砂のオベリスク~第七大陸紀行~
エンは感情と表情を気まぐれに縫い合わせる癖があった。たいていは大人びた無表情で過ごすが、苛立ちを笑顔で表現するなど造作も無いことだった。
だから、何を考えているのか推し量ることは難しい。
それでいて、その言葉にやどる説得力は並々ならぬものなのだ。
「言ったでしょう。あなたよりも準備してきてる、て。私の方が穴が小さいの。
月が空のてっぺんに来るというのは、時間や場所を言ってるんじゃ無い。
知らず知らずのうちに繋がる思考を切り離さないと、旅立つことはできないわ。何かを受け取ろうとして、手の平を下に向けることもある。
空のてっぺんの月。今はそれだけ考えましょう」