砂のオベリスク~第七大陸紀行~
二日目の三日月
翌朝の砂漠は雨だった。かなり大粒の水滴はうがつように列車の屋根を叩き、荷物車に流れる雑音を掻き消した。
気のせいか揺れも激しくなり、積まれた荷物の箱が、重たそうなものでさえ踊った。
既に事切れた電球が天井すれすれまで振れ、閉めた窓は斬首台の刃の真似をして跳ねた。
「これは、頼み込んで客室に入れてもらうかな。この荷物車だけ吹っ飛ばされそうだ」
「危険だわ。こんな中、外に出て連結部を渡ったらどんな酷いことになるか」
夜の去り忘れた車内で、エンの冷静さは決して気分を上向きにすることは無かった。
それでも、何か会話をしていないと不安だった。
「怖がったりはしないのかい。俺はかなり心細いよ」
「そんなこと無いわ。トカゲが駄目。大勢の人の中にいる方が怖いけど」
「なんだ、そのとしで人嫌いかい?」
「そんなわけ無いわ。ただ、このくらいが落ち着くのよ。騒がしいのは苦手だけれど、独りはもっと苦手だから」
夕方になると、空はエンの予言通りに晴れた。