砂のオベリスク~第七大陸紀行~
水の魔素
砂漠の暑さは際限無く上がり調子だ。
しばらくすれば、同行者のほとんどが薄着になり、私も滅多に脱がない上着を脇に抱えていた。
もともと身につけるものが白緑のワンピースだけだったエンは、頬の色も変えずに平然としていた。
砂もかなりの高温になっているはずだが、彼女の素足はやはり白いままだ。
「くそっ、こりゃひどいな」
バックパックから取り出した水のボトルは、こもった熱気のせいで湯たんぽになっていた。
喉は渇いていたが、我慢するにはきつい熱さだ。
「その中身、捨ててくれる。新しいのと入れ替えるわ」
「ええっ……いや、しかし」
「冷たい水を飲みたいでしょう」
逆さにすると、ボトルは勢い良く水を吐き出した。砂漠には染みすらもできなかった。
「あなた、魔素の心得は」
「いや、かじった程度だが、実践する才能が無かったんでね」
「分かったわ。それじゃあ、容器を貸して」
私が言う通りにすると、エンは驚くべき才能を披露した。
彼女がボトルの口元で何かを囁いたと思ったら、次には、空のボトルは清水で満たされたのだ。
飲めば、その水は全身に爽やかな鋭気を染み込ませた。喉ごしは今まで飲んだどの水よりも心地良かった。
「驚いたな、魔素を操れるのか」
「ええ」