砂のオベリスク~第七大陸紀行~
近づくにつれて人影はハッキリとしてきた。不安定な砂の地面を蹴るうちに、私たちはいつの間にか、顎を上に向けていた。
人影の正体は、スーツ姿の太った老紳士だった。
身の丈はゆうに私の二倍。
やけに細長い足の上に丸々とした胴体が乗っかり、その胴体に隠れるようにして頭が乗っていた。
顔を確認しようとしても、歯を剥き出しにして笑う口と、洞穴のような二つの鼻の穴ぐらいしか見えない。
はち切れそうな黒いスーツの迫力を前に、誰もが言葉を失っていた。
エンを除いた全員が、口を丸く開けて老紳士を見上げるしかできなかった。
老紳士は両手をひろげたまま、しばらく人形のようだったが、突然に腹を膨らませて、気取った甲高い声を上げた。
「まことに、素ン晴らしい!」