砂のオベリスク~第七大陸紀行~
案内者
休憩を終え、歩き出してから間もなく。日焼けした若い女性が声を上げて立ち止まった。
彼女は前方を指差して、何かがいると言った。
みんなどよめき、できるだけ彼女に密着して目を懲らした。
「あれは、もしかして人じゃないですか。あんなところで何をしているんでしょう」
「我らに先行していた者かもしれない」
少し後ろに立った私からも、彼らと同じものが見えていた。
私たちが向かうずっと先に、黒い人影がある。
こちらに来るわけでも、遠ざかるわけでも無い。ただ、両手を広げて立っていた。
何かを呼んでいるようでも、何かから逃げているようでもあった。
しかし、動かないのだ。絵の住人のように。
「気味が悪いな。これから通る道にいるから無視もできない」
「あれだけじゃ無いわ」
エンは一人だけ、一行とは正反対の方向を見ていた。
これまで歩いてきた方だ。
「どういうことなんだ」
足跡を何百歩もさかのぼった先に、人影があった。両手をひろげ、何をするでも無く立っていた。
行く道にある人影と、来た道にある人影。二つは、似ているというよりも全く同じだ。
私が他の者たちに知らせようとするのと同時に、誰かの声が上がった。
「とりあえず、行ってみよう。もしかしたらあれが案内者かもしれない」