砂のオベリスク~第七大陸紀行~
「いざ、かの地へ!」
それが合図だった。
アルバートルは腕を広げたまま、錆び付いたブリキの人形のように前進を始めた。
その様は、両足が針でできたコンパスにも思えた。
一人、また一人と、巣立ちをむかえた若鳥のように、丸い背中を追って走り出した。
私からは見えなかったが、彼らの瞳はまだ見ぬ希望に揺れていたのだろう。
エンは動かなかった。
窺い知れない表情で、案内者とそれに追従する者たちを見送っていた。
「だめよ。行ってはだめなのよ……」
彼らを追うように呟いた言葉が、渇いた空気に消えていく。
私の胸に不吉な予感がよぎる。
空が明るいまま、辺りの光が沈んだようだった。
旅の達成へ向かっているはずの行進が、ひどく遠く、そして虚しく思えた。
「あの人たち、最後の最後で、大挙して死票を投じたのね」