砂のオベリスク~第七大陸紀行~
「まあ、こんな感じだ。よかったら、君の旅についても教えてくれるかな」
私は気軽に尋ねたつもりだ。だからエンが迷いに顔を曇らせたとき、内心ひどく驚いた。
「妹がいるのよ」
これが話しはじめだ。
「いいえ、いたのね。
頭は悪かったけれど、とても可愛い子だったわ。臆病なくらい優しかった。
あの子はね、旅をしていたの。そして、その中で息を引き取った。ほかの、たくさんの旅人と同じように。
私はあの子の旅を辿りながら、あの子が生きた証を探し集めているのよ」
エンの妹の足跡が次に向かっていたのが、ミュシャだという。
彼女は、どれだけの若さで旅をしていたのか。どれだけの若さで旅を終えたのか。
白緑のワンピースは、彼女の唯一の、そして物言わぬ形見だった。