砂のオベリスク~第七大陸紀行~
海食
特殊な空間では時間の感じ方が違うものだけれど、まさにこの洞穴もそうだった。
時計の歯車は砂に負け、とうの昔に針を止めていた。そのせいで、本当に時間が止まってしまったように思えた。
「……何かしら、この音」
エンの発言から少し後。
ようやく私にも聞こえた。
なにか、遠くで杭を打ち付けているような音だった。高く、広い洞穴によく響く。
音の余韻が闇に溶ける頃に、また次の音が鳴る。
音は少しずつ私の背中に近づいてきて、それとともに低い地響きのようになった。
悪寒を感じた私は、静寂をこころがけながら、慌てて荷物をまとめた。
闇が不安をあおる。
「何だ。何か来ている」
「行っては帰り、寄せては返す。波みたい」