砂のオベリスク~第七大陸紀行~
彼女の骸布は白緑の
エンとの沈黙は、不愉快なものではなかった。
そこにはある種の安心感があり、私は気がねなく相棒の手入れをしたり、記録を整理したりできた。
彼女のことについて何一つ知らないと言っても良いのに、彼女を通じて感じる懐旧に似た何かが、心を閉じさせないのだ。
「ねえ、少し教えてほしいことがあるのだけれど」
「何だい?」
「違っていたら申し訳ないのだけれど、あなた、ミュシャを見つけることだけが目的じゃないでしょう」
「ああ、そうだよ。でも、ミュシャに行くことは有効な手段だと思っている。
とある絵を探していてね。どうやら、おれが一生のうちに見つけるのは難しいくらいの代物なんだ。
昔の知り合いからは、現実から夢に逃げているだけのバカだと言われたよ。
実際、最近は旅そのものに楽しみを覚えることもあるし、目的は口実なのかもしれないな」
私の話をじっと聞くエンは、何かを話したいようだった。