砂のオベリスク~第七大陸紀行~

赦免の列








ノイズと化した笑い声の中に、無数の砂色の仮面が浮かぶ。


三日月を三つ張り付けたような笑顔で、
道端で笑い転げる人々を見下ろしながら練り歩く。


またたく間に、道は白い法衣を纏った仮面僧たちの列に占領されてしまった。




「ワライアレ! ワライアレ!」



彼らの先頭に立って声高に叫ぶのは、ほぼ球体に近い大男だ。

その仮面は他の僧侶のものに比べて二回りほど大きく、
額には太陽をかたどったであろう紋様が彫られていた。

また、縁取るように並んだ独特の文字を見ることもできた。








「ちくしょう、うまく読めない」



 私はうつ伏せになって大衆にまぎれ、懐から出した分厚い手帳を開いていた。


これまでミュシャについて調べ分かったことを、どんなささいなことでも書いておいたものだ。



あせりに震える指でページをめくり、解読表を見つけて、大男の仮面の文字を一文字ずつ解読していく。


しかし、興奮と笑い声が私の内と外から集中力を奪い取っていくため、思うように進めない。



「シ、スム……いや、シェムだ。シェムエ……」

「『とわの幸福は、つつがなく施されました』……そんな言葉が彫られているわ」






息を荒げる私に、かたわらで伏せていたエンが耳打ちした。
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