キミに捧げる最後の恋
彼は私の腕を掴んでいたホストの腕を力任せにぐいっとひっぱった。
「あ、レンさん」
さっきまで威勢の良かったホストが急に頭を下げ始めた。
この人そんなに偉い人なの?
金髪にワックスを塗りたくって綺麗にセットされた髪の毛、黒いスーツに大胆に空いた胸元から見える輝いたネックレス、そして甘ったるい香水が私の周りに妖艶な匂いを漂わせる。
「客に触れる強引なキャッチは禁止されてるはずだけど?それにこの子まだ高校生だろ」
「すいません」
ホストはペコっと頭を下げると「じゃ、また後で」と言ってすたすたと夜の街に消えて言った。
「アンタも気を付けなよ」
そう言ってさっき腕を掴まれた拍子に落としてしまった携帯電話を拾って私に差し出した。
私をまだ少し痛む腕を擦りながら携帯電話を取った。
「ありがとう」
私は精一杯の返事をした。
コイツが助けてくれなかったら、今頃どうなっていたんだろうと思ったら急に怖くなって手が震えた。
「ったく、駅まで送る」
そうつぶやいた彼は私の震える手を握りしめた。
「い、いや、いいって」
必死に手を離そうとしたけど、強い彼の力には叶わなかった。
「俺の後輩のヘマだし、怖い思いさせて悪かったな」
ホストなんて、チャラチャラしてるだけの遊び人だと思ってた。
心のどこかで軽蔑してた。
透き通るような彼の目は優しくて、どことなく冷たくて。
彼の手は優しくて温かかった。