いざよいの月
 夏休みの間も、いつもと変わらない日々が続いていた。
 後半は坂井が実家に帰っていたので、美緒は二学期まで坂井のアパートには行かなかった。
 特にこの間で変わったことはなかった。
 坂井は相変わらず、美緒のゲームのパートナーとして理想通りだった。それ以上でもそれ以下でもなく……。

 そんな変わらない日々だというのに、美緒の心の奥深い場所はいつも落ち着かずざわめいていた。
 それはなんだか綱渡りをしているような気分。
 ひとつバランスを間違えれば落ちるだけ。そんなぎりぎりの状態が、もう2ヶ月も続いている。
 けれど綱渡りも永遠には続かない。
 ゴールにたどり着くか、失敗して落ちていくか……どちらにしても長くは続かない。いや、続けられない。

 もう時間も残り少なくなってきた。

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