はだかの王子さま
「もちろんですよ、姫。
 私はビッグ・ワールド最高位の『風使い』です」

 ハンドは、美有希に何の感情も見せずに、頷いた。

 そして、美有希をお姫様抱っこで、軽々と持ち上げ、立ち上がる。

 雑貨に化けたゴブリン達なら、ともかく!

 現実の人間が『飛ぶ』なんて!

 昨日の朝だったら、絶対信じられないことだった。

 けれども。

 もう、とっくに星羅と0は大きな黒い影の手に捕まえられて、高々と持ち上がってるのを見れば、判る。

 残りのハンドと美有希の二人ぐらい、簡単に、この空に消えちゃうよっ……!

「まっ……待って!」


 ぴしゅっ!


 星羅をどこにも連れてゆかないでって、必死に伸ばしたわたしの手を空気の膜がはじいた。

「……っ」

 ノートに線を引く定規ぐらいの太さ……かな。

 細い風の束に、手の甲を打たれ、その痛みに手をひっこめれば、ハンドが冷やかに笑う。

「どこの血筋かも判らぬ下賎な顔つきの者が、高貴な私たちに触れるな、と。
 姫の仰せです」

 わたしが、側に寄ることさえイヤだって……

 そう言い切って、眉を寄せるハンドに美有希は、横抱きに抱えられたまま、笑う。

「あら、乱暴はおやめなさい、ハンド。
 このヒトは昨日まで、わたくしのクラスメートでしたのよ?」

 そして、その気もないのに、言葉を続けた。

「わたくし、父上のフルメタル・ファングさまに良く似てますのよ?
 特に、どのような汚らわしい素性の者にでも、優しく情けをかけてしまうところが、ね」
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