はだかの王子さま
 落ちつきはらった声に、振りかえれば。

 黒いスーツを着て、色の濃いサングラスをした、黒髪の男のヒトがいた。

 長い手足に、程よく筋肉がつき、歩いてわたしに近づく様子が、まるで、動物園で見た黒豹みたいだ。

「あなたは、誰!?」

 とても丁寧で、静かだけど……なんだか、怖い。

 冷たく、危険な感じのするその声に、思わず後に下がると、黒服のヒトは、口の端だけでちらり、と笑った。

「私は、シャドゥ・ハンド。
 ビッグワールドの王家、王族に、ではなく。
 代々筆頭侯爵フルメタル家にのみ、直接忠誠を誓ったシャドゥ家次代の当主です」

「えっ……でも!」

 フルメタル家の『シャドゥ』って、賢介ん家のことでしょう!?

 当主って言うのは、その家で一番エライヒト……だよね?

 次代の当主ってことはお父さんの次にエライヒトって言うコト。

 だけど、この『ハンド』さん、賢介のお兄さんでは、ない……よ?

 だって、賢介とは幼なじみでよく知ってるけど、他に兄弟がいる、なんて聞いたこともない。

「ちゃんと説明しているのに、どこの誰だ?
 ……みたいな顔をしてますね?
 フルメタル家が複雑ならば、それに合わせて我が家の形も変わります。
 ま、あなたに理解は欠片も求めていませんが」

 ハンドは、無表情のまま淡々としゃべると、美有希の前で片膝をついた。

「……姫」

「うん、いいわ。
 王子も、あなたにかかれば、一言も喋れないわね?
 最高位の炎狼も、炎さえ呼ばせなければ、扱いやすいもの。
 このまま、わたくしの他に王子と、犬とを連れても、グラウェの影響なく、フェアリーランドまで飛べる?」
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