はだかの王子さま
 地を這うような低い、聞きなれた声に、振り返れば、そこに。

 自動車の整備士さんや、エアコン取り付けの電気工事のヒトがよく着るような、灰色のつなぎ服を着たヒトが立っていた。

 肩に着く寸前の少し長めの黒髪を、ひとくくりにゴムでしばり。

 背がすらりと高いヒト。

 つなぎ服が、かえって『働く男』みたいでカッコイイ。

 きれいに整った顔と肌は、二十代前半くらいに見えるし。

 思慮深そうな、落ち着いた瞳の輝きは、四十代以上、って主張してもおかしくない。

 この、年齢不詳の男性(ひと)は……

「お父~~さん」

「げ、フルメタル……じゃなかった、内藤(ないとう)じゃないか!」

 星羅が、うめくのを無視して。

 お父さんは、にこにこ笑顔で、ずぃ、と星羅に自分の顔を近づけた。

「これは、これは、桜路(おうじ)。
 いつも、ウチの娘が世話になってます」


 ……うぁ。

 おと~~さん。

 目だけは、笑ってない。

 なんだか怖い父さんの笑顔に、星羅は、かりかりと自分のこめかみあたりを掻いた。

「え~~あ~~その
 ……内藤。
 お前、僕の足を踏んでる」

「おや、そうでしたか?
 すみませんね」

 ……とか、っていいながら、父さん。

 星羅から足をどかさず、かえって足に力を込めたみたいだ。
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