はだかの王子さま
『それで、前当主の命令は、引き継ぎますか?
 ……否、であれば、私が責任を持って真衣さまの息を止めて参りますが』

 多分、この話をした上でも、美有希がわたしの命が欲しい、と願ったら。

 ハンドは、あっさりわたしを殺しに来るに違いない。

 そんな緊張感に、美有希は、一瞬息をのみ、すぐに莫迦ね! と叫んだ。

『もちろん父上の意思をつぐに決まってるでしょう!
 当主の座も、門番も!
 真衣の分まで、全部独り占めしたのに、これ以上何が欲しいってのよ!』

 ファングさまの絶対命令が『我が娘を守れ』ってところが、すごく愛されてて、妬けちゃうけどね、なんて。

 涙を拭き拭き言う美有希に、ハンドが微笑む。

『何をおっしゃられているのやら。
 姫もファングさまに『ヴェリネルラ』と呼ばれてましたでしょう?
 あなたもその絶対命令の中に、入っているんですからね?』

『ハンド!』

 叫ぶ美有希にハンドが微笑む。

『あなたは、今はまだ未熟ですが、きっと良い当主になります。
 これから、あなたが王の恋人になろうとも。
 夢敗れて、山野に住居を構えようとも。
 私は、あなたについて行く覚悟ができました。
 どうぞ、思うままに生きてください。
 私は、あなたをフルメタル家の当主と認め、従います』

 ハンドは、美有希に深く一礼すると、窓に向かって歩き出した。



 ……わたしを助けに行くために。



 ……でも。
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