はだかの王子さま
 美有希があんなにあっさり『排除』なんて言葉を使ったことを考えると、星羅だって同じことを考えるかもしれなかった。

 ビッグ・ワールドを統べ、こっちの世界にも、知り合いの居るそうな、王さまから逃げ切れないなら、いっそ……なんて考えるかもしれない。

 目的のためなら乱暴なことをしても構わないっていうのがビッグ・ワールドの常識なのかも知らないけど。

 最初に出会ったばかりの星羅の心が、深く傷ついていたのを知ってる。

 わたしだって王さまは嫌いだけど、そんな王さまのために、星羅の心に新しい傷をつけたくなんて、なかった。

 わたしが、前王さまの子どもかもしれない。

 なんて、現王の言葉を受けて。

 十年前、地下迷宮で会ったばかりのような、昏(くら)い瞳がそのままなんて、イヤだった。

 美有希に言わせれば『甘い』のかもしれないけれど。

 なるべく、みんなが傷つかず。

 なんとか、丸く収められる方法を、星羅と話し合って考えたかった。

 けれども。

 昨日までは、普通に持っていた携帯も、お姫様のカッコをしている今はなく。

 お父さんは、0と一緒に行方不明。

 デッキブラシ君も砂糖壷さんも見当たらず。

 美有希と賢介が、一旦引いてしまった以上。

 傷ついたハンドがどこかに隠れて居るわけもなく。

 星羅と連絡を取れる手段なんて、なかった。

 ぼんやりしているうちに、星羅と美有希が話し合って、さっさと『コト』を進めてしまい、気がついたら『なにもかも手遅れ』なんてコトになって欲しくなかった。



 どうしょう?



 どうしょう……!?



 困っていても何も出来ない。

 まともにベッドから降りることさえできずに、じたばたしている時だった。




 ばったんっ!



 と、荒っぽい音を立てて、王さまがやって来た。


 その後ろに、ソドニを従えて。

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