はだかの王子さま
 


 ひきっ


 思わず、自分でも顔が引きつったことが判る。

 そんなわたしに対して、王さまは、とっても上機嫌だった。

 見るのもイヤな偽物の星羅の顔に、本物のニコニコ笑顔を貼り付けて、ずかずかとベッドの側にやって来ると言った。

『聞いたぞ! ナイトウマイ!
 明日がそなたの誕生日だそうだな!』

『そ……そうですが』

 テンションの高い王さまの言葉にさらに引きつりながら頷けば、王さまは、もっと笑顔になった。

『それは、めでたい!
 しかも、フェアリーランドの大扉が開く前日とは、なんとも運命的ではないか!
 早速、ナイトウマイの為に盛大なパーティーを開かねばなるまい!
 惜しむらくは、あまり準備時間が無い上に、美しいそなたに見合う、ビッグ・ワールドの品々をそうふんだんに、贈れないトコロだが……』

 こちらの世界の品々は、装飾品に至るまで機能ばかりを追究して、美しくもなければ、個性的なセンスも無い。

 しかし、さすがにフェアリーランドの扉が開く寸前では、ビッグ・ワールドの物資もそう多く無いからな、なんて。

 文句をひとしきりつぶやいて、王さまは、言った。

『こちらの世界の風習は、良く判らないが、ビッグ・ワールドの習慣では、誕生の祝いは当人の幸せを願って、誕生日当日に必ず渡すことになっておる。
 で、あるから。
 今年のナイトウマイの誕生祝いは、非常に不本意であるが、こちらの世界のモノを贈ろう。
 日頃、こちらの世界で、何か欲しいと思ったモノは無いか?
 宝飾品だけでなく、こっちの世界のクルマや、くるーざーと言ったか?
 小型なら船舶やヘリコプターとか言う乗り物でも構わぬぞ』

『……贈り物は、いりません、と昨日も言ったはずですが……』

 例え、誕生日プレゼントでも、このヒトからモノを貰っちゃダメだ。

 身構えるわたしに、王さまは、笑う。

『そうか?
 昨日の所望品は『ヴェリネルラのワイン』だったな?
 貴重なワインを取りに行けば、騒ぎを起こし。
 落ち着いた所で、栓を抜こうと思えば、この世界では未成年の飲酒は、認められてない、とゴネる』
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