はだかの王子さま
『……』

『美しいそなたの我がままは、どんな願いでも可愛いもの。
 如何に貴重なヴェリネルラでも、そなたの口に合わぬのなら、捨てても構わぬが。
 その味を確かめもしないで瓶を割るには惜しすぎる。
 よって、明後日の夜。
 フェアリーランドの大扉が閉まる時。
 そなたも、我が故郷に連れて帰ることに決めた。
 その土産を兼ねて、こちらの世界の品々を誕生日祝いに贈るのだ』

 ……って……

 えええぇぇっ!

 王さまが、わたしをビッグ・ワールドに連れて行く……の?

 それってまさか……

 ゆっくりと血の気が引いてゆくのが判る。

 きっと青ざめているだろうわたしに、王さまはにこやかに言った。

『ナイトウマイよ。
 ビッグワールドへ来い。
 そして、我と共に、ヴェリネルラの花を見よう』


 やっぱり!


 半分予想していたその言葉は、わたしにとって、絶対に受け入れられない言葉だった。

 だって!

 ビッグワールドへ、ヴェリネルラの花を見に一緒に行くって約束ヒトは、星羅。

 偽物の王さまじゃなく、本物の星羅なのに!

 王さまだって、今では、わたしと星羅が恋人同士だって判っているのに、そんなこと言うし!

 だから、わたし。

『イヤです!』

 って、はっきり言ったのに!

 王さまは、しょうがないヤツだなぁとでも言いたげな顔をして、言葉を続けた。

『なぜ、そなたは我と共に、ビッグワールドへ行くのを拒むのか?
 そなたのこっちの世界の家は、壊れて、もはや無く。
 住むには適さない、と聞いたのだが?』

『う……う~~んと』

『もはや無く』ってしみじみ言われる覚えはないけれど!

 確かに美有希には、お家、壊されちゃったのは、確かだった。

 一瞬、ず~んと暗くなる思いを振り払い、わたしは身を乗り出して、王さまに主張した。

『お家が壊れてても構いません!
 大工さんに頼んで、直るまで、お父さん……じゃなかった。
 父と一緒に、どこかのマンションかアパートを借りて……』

『マンション?
 アパート?
 それは、狭い集合住宅のことだったな?
 ……二十匹のゴブリンを連れてそこに住むと?』

 う~~~~ん。
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