はだかの王子さま
『ただ、我が腹違いの弟ゼギアスフェルは、こちら側の世界を良く知り、有能だからな。
 美しい姿を手に入れたヤツには『追放』と言う形でなく。
 こちら側の世界から、我らを支え、ビッグワールドの秘密を守る要(かなめ)として、改めて白薔薇宮殿の主(あるじ)とさせるつもりだ』

 これから先、来年まで一年間は、ヒトが出入り出来るほど大きな扉が開かないことでわかる通り。

 安定して毎年開くことの出来る扉は少なく。

 これからもフェアリーランドの大扉の守護は、重要な役割だって、王さまは言ったけれど!

 言い方は違うけれど、やっぱり星羅の立場の方も、悪い意味で変わらない。

 星羅は、ビッグワールドに帰れないってことじゃない!

 ……って、ぷんすか怒って、ふと、とんでもないことに気かついた。

 フェアリーランドの扉以外、他のヒトが通れるほどの扉がないってことは。

『一度、フェアリーランドに行ってしまったら。
 来年になるまで、こちら側の世界に戻って来られないってこと?』

『まあ、そうだな』

 王さまは、星羅の顔をして、ふふふん、と鼻で笑った。

『今回は丸一年封鎖と長いからな。『けーぶる』という細い金属線が、異界の壁を越えても断絶しないか、実験もするつもりで、早々とこちらの世界に来たのだ。
 上手く実験が成功すれば、ビッグワールドでもリアルタイムで『てれび』や『いんたーねっと』とやらも視聴したり、使えたりするはずだ。
 それに、なにより、我が居るからな』

 だから、ソレを踏まえて。

 そなたのほしい物に加え、テレビやPCも誕生日プレゼントに混ぜなければ、ならないな、なんて、王さまは上機嫌で言った。

 王さまの中では、わたしが、ゴブリン君たちを連れて、ビッグワールドへ行くことが、もう決定事項らしい。

 そして、後ろに控えるソドニが、王さまにささやく言葉に青ざめる。

『……丸々一年、離れて暮らしているうちには、ゼギアスフェルさまのことなど、すっかり忘れてしまうでしょう。
 そして、もし、多少強引でも彼女に迫り、王との子どもが宿りさえすれば。
 グラウェの神に誓って、死が二人を分かつまで、誰もお二人を引き裂けません』
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