はだかの王子さま
 わたしはちっとも納得の行かないのに!

 王さまは、かまわず言葉を続けた。

『ゴブリンどもは、そもそも『ヒト』ではないからな。
 どう扱おうと我の勝手ではないか?
 しかも、とても醜い輩たちだ。
 どんな理由を付けても処分して、
 一匹でも多く数を減じてしまえば良いのだ』

『そんな……酷い』

『酷い? どこが、だ?
 相手はヒトになれぬ獣の類(たぐ)いだぞ?
 まあ、ゼギアスフェルとフルメタル・ファングも、同じようなことを言ってたな。
 それで処刑寸前、二人がかりで、子どもたちの命乞いをしたのだが』

 そこまで言って、王さまは、莫迦にしたように言葉を吐き捨てた。

『ビッグワールドのゴブリンと言えば、こちらの世界の『ごきぶり』とかいう、虫、同然。
 しかも、親は獣のクセにヒトさまの住居を荒らした罪人だからのう』

 王さまは、そんなふうに言ったけれど。

 例え、子どもたち本人に罪が無くともビッグワールドのヒトには、ゴブリンってだけで毛嫌いされ、ともすると暴力をふるわれるみたい。

 それを見越して、獣の姿で動けない星羅代わりに、お父さんがゴブリンを連れて、フェアリーランドの外に住むことにしたらしい。

 だから、つまり。

 ゴブリン君たちが居る限り、白薔薇宮殿での居候も無理だと、王さまは、笑う。

『だがな、ナイトウマイ。
 そなたが、我と共にビッグワールドに来ると言うのなら。
 ビッグワールドにそなたの屋敷を与えよう。
 我の前で醜いゴブリンの本性を見せぬと誓うなら。
 そこで、ヤツらを飼い、今まで通りの生活を送れば良い』

『今まで通りの生活って……!
 父と一緒に?』

『それは、そなたの我に対する、態度次第だが』

『星羅……ゼギアスフェルには、二度と会えない条件で?』

『そんな!
 我が、二人の間を引き裂くような言い方は心外だな、ナイトウマイ』

『……ちがうの?
 だってあなたは、星羅に会わせてくれないじゃない!』

『心外な。
 ゼギアスフェルの方がそなたに会いたくない、と言っておるのだ』

 なんて、王さまは、大げさにため息をついた。
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