はだかの王子さま
「このまま星羅と別れたら、わたし、きっと死んじゃうよ。
……だけど……自分の気持ちが整理できないの……
両親が死んでしまったのに、こんな風に思うことは、悪いことなのに、ね」
なんて、言葉にしてみて、自分の気持ちがはじめて良くわかる。
そうか。
だから、わたし、心が壊れそうに、痛むんだ。
『星羅のことを愛してる』
それは、自分の身よりも、もっと好き。
星羅がわたしを『ヴェリネルラ(我が身より愛しい)』って呼ぶように、わたしの『ヴェリネルラ』は星羅以外に無く。
顔も知らない『本当の両親の死』よりも、星羅のことが大事で、愛してる。
だけど、身内の死よりも恋人を取る、なんて。
そんな罪に、耐えられなくて自分で自分に刃を向けたのかもしれない。
そんなわたしの告白に、星羅は静かに言った。
「真衣が気に病むことは、一つも無いんだよ。
悪いのは、全部僕のせいだ。
それでも、どうしても死ぬ、と言うなら、僕も死ぬ」
「星羅」
「ヒトは僕のことを暗殺者だって言うよ。
けれども、僕はヒトが死んでゆくのを見るのは、もう、二度とイヤだ。
しかも、それが『真衣』だと言うのなら、僕は生きてなんていられない」
そう言うと。
星羅は、わたしをもっと強く抱きしめた。
熱い。
強い。
そんな、星羅の体温を感じて、改めて思う。
「……星羅」
心からあなたが好き。
だから、本当に。
「わたしの両親を殺したのが、星羅でなければ良かったのに」
なんて。
あふれ出て来た涙を星羅の肩口で拭いて、ささやいた時だった。
ぽんっ、ぽんっ、なんて。
この部屋の扉の横で、ビンに詰まったコルク栓を抜くときのような軽い音が二回続いたかと思うと。
聞いたことのある声が、わたしたちを呼んだんだ。